サンダーマスクの正しいイジり方2

big-cobra2011-05-28

今回は、前回部分的に取り上げた「火を吐く魔獣」の本筋を例に、シンナーマンだけではない「サンダーマスクは全話発狂」ぶりを味わっていただきたい。
「火を吐く魔獣」は、ある漫画家の描いたマンガのストーリー通りに魔獣が暴れ出すという内容である。
こういった手法は、推理小説の通りに殺人事件が起こるなど、サスペンスものでは定番のネタではあるが、ミステリー性が高められる一方で、あえて創作と現実をシンクロさせなければならない犯人側の理由付けやバックボーンの設定が困難であると言える。何より足がつきやすくなるし、手の内を明かす事にもなるのだから。


さて、「火を吐く魔獣」のストーリーを追う前に、同じようなテーマで描かれた「ウルトラマンA」第4話「三億年超獣出現!」を比較(前フリ)として紹介しておこう。


本エピソードで虚構と現実の垣根を払うキーマンは漫画家・栗虫太郎。


彼はクラスの同窓会と偽り、かつて思いを寄せていた当時の同級生・TACの美川隊員を自宅に呼び寄せて監禁する。
漫画家として成功して豪邸で暮らし、一見何不自由ない生活を送っていた栗のコンプレックスは、根暗で劣等生で絵を描く事しか楽しみが無かった孤独な少年時代…そして当時自分の書いたラブレターを読まずに突き返した美川への妄念だった。


そんな彼の「心の闇」を利用したのが異次元人ヤプールヤプールは栗が描いた漫画と同じ超獣ガランを暴れさせる。


ガランのエネルギーはそんな栗の欲望と執念だ。栗が描けば描くほどガランは激しく暴れ回る。


栗が消しゴムをかければガランも消える!天下の円谷・オプチカルな真骨頂!




だがガランと一心同体となった栗にとって、ガランの死は自身の破滅を意味する。ガランがウルトラマンエースに倒されると同時に、栗もまた死んでいった。美川…いや、この世の全てを呪うかのような断末魔の叫びをあげながら。
悪魔とは悪事を行なう者のことではない。人間の弱味や心のスキマにつけいる存在である…本作はヤプールを原意の「悪魔」として設定した、敬虔なクリスチャンでもある市川森一キリスト教的世界観が最も色濃く表現された第2次ウルトラシリーズ屈指の異色作で、そんな市川ワールドによって冒頭で述べた「理由付け」も難なくクリアしている。栗を演じた名優・清水鉱治の怪演もインパクト十分だった。


そしてお待ち兼ねのサンダーマスク「火を吐く魔獣」はというと…



なつかしの「冒険王」を片手に、「このマンガの通りにしてやる」とほくそ笑む魔王デカンダ。
のっけから良く分からんが、とにかくデカンダはある漫画家に目を付ける。

フニャコフニャオの実写版ではない。
ゲッターロボ」のムサシでおなじみ西尾徳演じる、あまりにもステロタイプな漫画家。
もしかしてサンダーマスクの「一応の原作者」手塚御大がモデルか?!

彼は冒険王に魔獣バラジュードンの漫画を描いて売れっ子となるが、漫画の通りにバラジュードンが暴れ出したため科学パトロール隊の加地"悪魔元帥"健太郎演じる隊長にメチャクチャ怒られてしまい、しぶしぶマンガの中のバラジュードンを殺してハッピーエンドにさせられてしまう。

もちろん売上は激減!
「なんだハッピーエンドか」と本を買わずに立ち去る子供たちに、岩城和男演じる本屋のオヤジも「アクマイザー3」で光彦の「どうして攻め」を受けた時のように困惑。

ちなみに前回紹介した四人組のくだりで、バラジュードンが全く動かなかった理由について。
サンダーマスクに変身する主人公・命光一は「太陽エネルギーを吸収してるんだ」などともっともらしい事を言っていたが、ヒロインまゆみが言っていたように漫画の続きが発売されるのを待っていたと考えるのが正解のような気がする。
なぜそこまでして漫画にこだわる?!

売上が下がって落胆する漫画家。
これがフニャコフニャオならオシシ仮面を出せば万事解決だが、彼の場合はそうもいかない。

そこへ現われた魔王デカンダ!
すわ「もうお前には用はない!」と漫画家を始末するのか?!

「次はこの原稿で行け!」

お前が描いたんかいデカンダ?!
もう地球征服やめて漫画家になれや!!w

しかもメッチャ上手いし!
「隊長さんに怒られちゃう」と弱気な漫画家に「お前の才能を認めてるのはワシだけだ」と説得までする徹底ぶり…だから何で?!

魔王が自ら描いてまでマンガの通りにしなければならない理由は最後まで語られることはなく、ラストは漫画家の「もうこりごりですよ〜」的なオチに一同笑って大団円…
見てるこっちがこりごりだ!