国際プロレステーマ曲検証

去る23日にインターFMにて「国際プロレステーマ曲セレクション」の第二弾が放送され、その番組内において塾長が「昭和プロレスマガジン」誌上で発表した事柄が幾つか紹介されました。
尤も、自分から司会の流智美氏に頼みこんだ事なのだがwそれだけテーマ曲についての「正しい歴史」をテーマ曲ファンの皆様に知ってもらいたいと思っている。
そこで今回はラジオを聞き逃した方のために、いつもと趣向を変えて極めてマジメに番組内で発表された事柄の詳細をば…。

まずはスーパースター・ビリー・グラハムのテーマについて。
グラハムのテーマといえば映画「ジーザス・クライスト・スーパースター」の挿入歌「スーパースター」であるというのは、日本プロレス史上初のテーマ曲という事でテーマ曲ファンのみならず、プロレスファン全体に浸透している有名な歴史的事実と言っていいだろう。
その詳細として、多くのテーマ曲マニアが参考文献として重用しているであろう「悶絶!プロレス秘宝館2」そして本書の執筆者が参考にしたと思われる「別冊ゴング」の昭和54年1月号及び昭和55年7月号のテーマ曲特集記事には、昭和49年にIWA王者として初来日し、マイティ井上と3度に渡る激戦を繰り広げた末に王座を明け渡した際にはカール・アンダーソンによる「スーパースター」…すなわち映画のオリジナルサントラ版が使われたとあり、6年後の昭和54年に再来日した時には101ストリングスによるインストカバー版が使われたとハッキリ記されている。
そしてそれは永らくテーマ曲マニア間での「常識」として語り継がれてきた。
私も長年それを何の疑いもなく信じてきたのだが、ある日同郷にして中学校の大先輩でもある高名なプロレス評論家・流智美氏のご厚意により井上戦を始めとするグラハムの初来日時の映像を見せていただく事が叶った。
そこで初めて判明したものは、これらの「常識」を覆す歴史的事実だったのである。
グラハムは初来日から、101ストリングス版を使用していたのである。
確認した映像は昭和49年9月15日後楽園大会におけるアニマル浜口戦と10月7日越谷大会におけるIWA王座から転落した井上戦。その両方で101ストリングス版が使用されたのを当時の映像でハッキリと確認する事が出来た。
先日、あるイベントの合間にプロレスレコード収集家として知られるフリーアナウンサー清野茂樹氏とお話をさせていただく機会に恵まれ、この事実を告げたところ大変驚いておられた。
清野氏すらもご存知でなかったこの事実…やはりテーマ曲における真実とは映像を見るまでは辿りつけないものなのだという事を痛感した次第なのである。

続いてAWAの帝王バーン・ガニアのテーマについて。
これまで国際におけるガニアのテーマは、小林邦昭の「ザ・ルームパート1」でおなじみリック・ウェイクマンによる「ホワイトロック」であるというのが、グラハムほどの浸透度ではないにしろ「定説」に近い扱いで広まっていた。
インターFMが公式サイトで国際プロレスのテーマ曲のリクエストを募った時にも、候補曲の一つとして「バーン・ガニアのテーマ ホワイトロック」と載せられたくらいだ。
これについては、私の駄文を「昭和プロレスマガジン」に載せていただき、今日の塾長があるのはこの方のお陰と言っても過言ではない大恩人と言うべきミック博士よりお借りした映像により新たな事実を判明させる事が出来た。
ガニアは「ホワイトロック」ではなく、「ビッグベン」という曲で入場していた。
ガニアは昭和54年のデビリッシュファイトシリーズに5戦のみの特別参加として来日し、内4戦がテレビ中継されたが、そのいずれもが「ビッグベン」だった。
それより前の来日ではまだテーマ曲が定着していない時代である上に、そもそも「ホワイトロック」はまだリリースされていない。ガニアが「ホワイトロック」を使った可能性はゼロであると断言していいだろう。
ちなみに「ビッグベン」も同じリック・ウェイクマンによるナンバーで、どちらもシンセサイザーが印象的な楽曲である。
参考のために両方のファイルを貼っておく。聞いてもらえば分かるようにどちらも雰囲気が似た曲ゆえに情報が錯綜して伝わったのではないかと思われる。
しかも「ホワイトロック」はインスブルック冬季オリンピックの記録映画の主題歌で、一般知名度にかなりの開きがあった事も情報の錯綜に拍車をかけたのかもしれない。
Rick Wakeman - Big Ben
http://www.youtube.com/watch?v=g-uw79DcoM4
Rick Wakeman - White Rock
http://www.youtube.com/watch?v=sRQdSmKMaIk
ラジオで紹介された事の詳細は以上。
国際プロレスのテーマ曲を研究していて学んだのは、かように古い時代の、しかも文言でしか伝わっていないテーマ曲の情報は決して鵜呑みにしてはならないという事。
国際関連でまだ映像で確認出来ていない曲はワイルド・アンガスの「ブラック・ウィドウ」、ザ・モンゴリアンズの「ディスコ・スペースインベーダー」など。アンガスについては流氏によると、入場曲が聞ける映像が現存している可能性はほとんどゼロに近いとの事…嗚呼!