ヒュー!ヒュー!ヒュー!

新生コブラ塾の記念すべき一発目は、よりにもよって「突撃!ヒューマン」だ!
ハロプロを失った(というか、見限った)塾長にとって、ブログにしたためるくらい興味のあることと言えば昭和の特撮やプロレスなど一方的に過去へのベクトルしか向いてない以上、ここで取り上げる記事はタイムリー性もクソもあったもんじゃないわけだが、今回に限ってはちょっと思うところがあったりする。
先日スーちゃんこと田中好子さんが亡くなられて、キャンディーズでも「黒い雨」でも、ましてや「ちゅらさん」でもなく真っ先に「突撃!ヒューマン」を思い出した酔狂な野郎は塾長の他に何人いたのだろうか?
もちろん塾長はこの作品を見たことがない。だが、だからこそ思いは募る一方なんである。
かのウルトラマンや数多のウルトラ怪獣の生みの親…孤高の天才・成田亨が自らプロデュースした、変身ブームの仇花の一つとして処理するにはあまりにも惜しい「幻の作品」。
しかも「舞台での公開録画」という性質上フィルムが現存していない可能性が高く、成田氏をはじめ関係者のほとんどの方が亡くなられているのでこの作品を語れる人物は現在では非常に少ないのだ。
そんな中、今また田中さんが逝ってしまわれた事により、これまで以上に人々の記憶から消え去りつつある!
というわけで今回は、田中さんをはじめ関係者の方々へのご冥福と、今後何らかの形で本作の映像が明らかにされる事を願い、「突撃!ヒューマン」を知ったかぶろうと思います。

ヒューマンのデザイン画及び造形物。
見よ!この洗練された美しさ。ウルトラマンウルトラセブンを経て遂に到達した「正義の宇宙人」の最高峰。
のちに成田氏は「新しいデザインとは常にシンプルなもの。考える事を放棄した者ほど複雑にしようとする」という旨の発言をされた事があるが、まさにその言葉通りの仕上がりではないか!
まあこの発言は、自身の与り知らぬところでウルトラマンのデザインを変えられてしまった「帰ってきたウルトラマン」以降の円谷スタッフに対する恨み節でもあるわけで、第2次シリーズも大好きな塾長的にはチト複雑な気もするが(笑)その一方で批判する権利があるのは成田氏だけ!という思いもある。


成田氏にとってウルトラマンのデザインは自信作だが、造形物に不満があったそうである。
それに対しヒューマンはデザイン造形ともに会心の出来だったそうな。
ウルトラマンのように塗って光らせるのではなく最初から光る素材を、という事で採用されたステンレス製マスクのこの輝き!

この豪華なレギュラー陣!
ヒューマンに変身する主人公・岩城淳一郎に、オックスから俳優に転身して間もない夏夕介
いわゆるマドンナ役、怪獣新聞記者(なんちゅう肩書き!)星山ルミ子にキャンディーズデビュー前の我らがスーちゃん!当時16歳!!
そしてカメラマン平井に「いなかっぺ大将」の西一でおなじみ八代駿
この三人も既に亡くなられました…。


ちなみに本作の裏番組は、あの「仮面ライダー」…相手が悪すぎたのか視聴率は惨敗。
後に夏氏が「特捜最前線」で藤岡弘と共演した際にこの事を話したそうだが、スーちゃんもどこかの現場で島田陽子山本リンダあたりに話したりしたのだろうか?

まさに成田イズムの煮凝り!
抽象芸術のような、誰にもマネできない卓越したセンスに彩られた怪獣・宇宙人ども!
本作に登場する敵キャラは舞台でのアクションを考慮して、動きやすい人間フォルムの怪獣が多かった一方、レッドキングへのセルフオマージュというべき王道怪獣ジャイロック(70年代唯一の成田・高山怪獣!)や本物の風船を利用して操演する「リアルバルンガ」ともいうべきシビレッタなどバラエティに富んでいた。


前代未聞の「公開ヒーロー番組」を作るにあたり、成田氏をはじめとするスタッフは「舞台を見に来た客とテレビを見ている視聴者、両方とも楽しませるにはどうしたらいいか」という事を常に考えていたそうである。
しかも「打倒!仮面ライダー」という途方もない目標を掲げながら…。
とにかくこの作品の根底に流れるのは、国際プロレスばりの飽くなきパイオニア精神。
この番組の失敗を受けたせいか以降こうした作品は一切製作されていないが、未開の地平を切り開かんとしたスタッフと出演者たちの勇気と熱意は永遠に語り継がれなければならない。
特撮ファンとして、この作品の発掘を切に願う!